手描きにこだわる!技の伝承
全国的にも数少ない手描きの鯉幟(鯉のぼり)職人、高儀の6代目高田武史さんにお話を伺いました。
高儀さんは大阪府で唯一の手描き鯉幟職人です。
明治中期から代々技術を受け継ぎ鯉幟を作っています。
もっと遡れば、江戸時代末期の安政年間に南旅籠町三十番屋敷(現在の阪堺線御陵前付近)で玩具問屋として開業して、鯉幟の原型である紙鯉を作り上げてきました。
鯉幟の始まりは

(参考)京都石清水八幡宮の紙鯉
江戸時代の鯉幟は紙鯉と言って鯉紙で鯉の形を作って男児の出世を願って家々に揚げていました。
和紙の鯉は4~5mの大きさがあったと言われています。
その紙鯉を立体の和凧(大阪では勝間凧[こつま]という)と合体して布製にしたのが鯉幟の原型です。
なぜ鯉なのか?
中国の故事に習って川を上る鯉が龍に化身するという言い伝えがあります。
ここから出世する象徴が鯉となり、日本に伝わり男の子が産まれるとその子の出世を願って鯉を揚げる習慣ができたそうです。
高儀さんは明治時代に鯉幟が布になっていった時に、いち早く英国から広幅の木綿生地を輸入して布製の鯉幟づくりを始めました。
今でもその頃の生地が残っていて、お店に展示しています。
高儀の鯉
高儀さんの鯉の特徴をご紹介します。
金太郎
金太郎が背に乗るデザインは高儀さんのオリジナルです。
大正時代の職人であった音吉さんが考案して高儀の代表作として現在に受け継がれてきました。
毛刷毛(けはけ)鯉
毛刷毛鯉と言って鱗の中に放射線状の線が入っています。
この線を描くのは独自で加工した刷毛を鯉の大きさに応じて使い分けて引きます。
- 鱗の罫線
- 独自加工の刷毛
撥水加工
PM2.5などの大気汚染よる鯉の汚れを防ぐために撥水加工を研究しているそうです。
目玉
シールではなく手で描いた中に銀燭で大空で泳ぐとキラキラ輝く目玉を配置するこだわり
鯉の形状
鯉がキレイに泳ぐには
鯉の形で泳ぎ方が違ってきます。
高儀さんの鯉は代々伝わるこだわりが形となって受け継がれています。
そういえば高儀さんの鯉は本物の鯉に似ていますね。
イメージ的にプリントの鯉はもっと円筒形で直線的だったように思います。
元々の立体紙凧がルーツの鯉幟だから大空をキレイ泳ぐ工夫が随所にあるんですね。
太いお腹いっぱいに空気を
大きな口で空気を腹いっぱい取り込みます。
紐の位置にも微妙なバランスがあるそうです。
元々お腹の部分が太い上に金太郎が乗ってるので他社に比べてかなり腹が太くなっています。
- 大きな口
- 太いお腹
ギュッとしぼった尾っぽ
尾の部分がしまってるから、お腹いっぱいに空気が溜まって綺麗に膨らみ優雅に泳ぐんですって。
ヒレ
このヒレは凧の足と同じでバランサーの役割
高田さんも先代から「ヒレは大きく取りや!この形で鯉が裏返りにくくなるんやで。」と教えられたそうです。
こんな所にも長年の経験と技が詰まってるんですね。
- しぼった尻尾
- ヒレ
鯉づくり
ミシン
先代の要望に応じてミシンメーカーが開発してくれた特殊ミシン
ローラーで布を送るのでずれずに縫い合わせることができます。
巨大鯉を作るには大活躍するそうです。
着色
着色は特殊な顔料を使っています。
金太郎の赤
目の青色
真鯉の黒
極秘の調合で他では真似のできない色です。
刷毛
京都の刷毛職人に特注で作ってもらった刷毛を使い分けて、鯉が描かれます。
- 特注ミシン
- 刷毛
- たくさんの刷毛
ぼかし
刷毛に顔料と水糊を絶妙のバランスでしみこませて描く技によってこのグラデーションが生まれます。
鯉幟の歴史
真鯉1匹から
紙鯉~真鯉1匹~緋鯉登場~吹き流し登場~青い鯉(昭和40年ころ)ナイロン生地のプリント鯉の業者が色数を増やしました。
その後緑やピンクの鯉も登場してきました。
吹き流し
吹き流しの5色は中国の五行説に基づきます。
四神=青竜(青→緑)、白虎(白)、朱雀(赤)、玄武(黒→紫)に日輪の(黄)の5色であると言われています。
最大級の鯉
高儀さんの最大サイズ9mの巨大鯉です。
このBIG9m鯉は毎年5月に大阪万博公園で揚げられているそうです。
9m鯉は職人技の集大成
高儀さん曰く
このヒレのラインを一気に曲がらずに描くことが超難しい!
2m近くを一気にぶれなく、歪みなく描くって正に職人技!
この写真の鯉は先代の作品でこのヒレのラインを入れれるようになるには長い年月と熟練が必要だそうです。
(現在はこのサイズの鯉は作っていません。)
高儀さんの1年間
シーズン前の3月4月になると手描きの実演で全国の百貨店を飛び回る日々が続きます。
それが終わると、アフターメンテナンス
そして翌年の下準備、秋ごろから鯉づくりが始まります。
心意気を売る
高儀さん曰く
「鯉を売るのではなく職人の心意気を買っていただくのです。」
ナイロンのプリントの鯉幟なら安価で売ってます。
それに、鯉幟を買う機会は人生の中でそう頻繁にありません。
今年も来年も買うものではないのです。
そのお客さんが1度鯉のぼりを買ったら次にいつ買うのかわかりません。またその後一生買わない場合だってあります。
だから、祝う気持ち、子や孫の元気な成長を願う気持ちに応える鯉を作る。
この職人の心意気こそが他社に勝る高儀の鯉だと思っています。
と語ってくださいました。
シーズンオフには
高儀さんではシーズンオフに、鯉のタペストリーづくり体験イベントをお店や堺市内に出向いて開催しているそうです。
堺五月鯉幟 高儀
堺市西区浜寺船尾町東3丁413
電話:072-263-2205
イベント等で店を不在にしている場合がございます。
お店に行く場合は、まずお電話で連絡してください。
地図
[map addr=”堺市西区浜寺船尾町東3丁413″]